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kionachiの日記

中野でコミックやラノベの装丁やテキスト仕事や社長などをしている木緒なちの日記です。

東洋美術学校コミックコンテンツデザインゼミを振り返って

 昨年の春先、東洋美術学校の中込副校長から突然お誘いを頂き、専門学校のデザイン科で教鞭を執ることとなった。副校長の熱心な口調にその気になったものの、僕は元々映像屋の出身で体系立ったデザインの教育を受けていない。タイポグラフィもレイアウトも作字もすべて我流だ。教えられることもあるにはあるが、あまりに偏った覚え方をして後々困ることになってはいけない。

 そこで今回の授業では技術ではなく考え方の話をすることにした。ロゴ・ライトノベル・コミックの3つの大きな枠組みを作り、そのフィールドで仕事をする際にどのような考えをすればいいか、大切なものは何か、作りながら説明し、感覚を掴んでいって欲しいと思い、授業の組み立てを行った。

 すべての授業が終わり、今思うこととしては、ちょっと内容として難しいというか、もう一段階前の話をすべきだったかなということだった。自分は専門学校という所を、職能を得るために来る場所だと思っていて、漠然とした話よりも明確に狙いどころを絞った話にした方がいいと考えていた。でも実際は、デザインの面白い部分や気づきの点をもっと重視し、刺激を与えながらの授業をもっと意識した方がよかったと感じた。これはどちらかというと、働き始めてすぐぐらいの人に向けた授業になってしまっていた。

 当初16人の希望者がいたゼミは、最終的に5人にまで減ってしまった。就職活動時期、卒展、土曜日、必修ではないゼミ、学年コース混在と、ラクに欠席できる状況だったとはいえ、もっと『面白い』と思って貰える授業にできればよかったなと素直に反省した。それでも、最後まで残ってくれた生徒さんは、皆きちんと話を聞いて、課題もとても真面目に取り組んでくれた。大幅に生徒数が減った段階でちょっと心が折れそうになったが、残って聞いてくれる生徒さんがいる限りは、と続けた。

 人に何かを教えるというのは本当に難しい。ただ項目を羅列して説明するだけでは頭には入ってこない。刺激を与え、頭を開いて、そこに適切な形で投げ込まなくては、それは知識として成立しない。右から左に流れていくだけだ。課題を出せばいい、としても、その内容が生徒さんの知識量に合わなくては、それを目の前にして途方に暮れるだけだ。現在の知識量、技術の量を見極めた上で、それよりも『少しだけ』上のクラスの課題を出す。それによって一段上に行くことができる。見極めができていないと、成長のチャンスは失われ、その生徒さんは授業を投げることになってしまう。

 一連の授業を経て、自分なりに反省もあるし、改善点も見えた。でも、今回受講してくれた16人の生徒さんには、今回限りで次を受けてもらう機会は無い。本来なら、その人たちにこそ、一番に成果を見て欲しいのに。授業というのはなんと寂しいものか。

 ともあれ、後ろを向いていては何にもならない。常套句で申し訳ないけれど、僕もまた皆に教えて貰ったのだと思うこととして、次の授業に挑みたいと思う。今度受け持つのは必修授業で、かつ夜間部の社会人向けクラスらしい。どちらかというと、今回やろうとしていた内容がより活かせるに違いない。ぜひ、受けて良かったと思えるものにしたいと考えている。

 

 

 今回の授業においてご協力頂きました皆様、東洋美術学校の職員・教員の皆様、そして何よりも生徒の皆様に厚くお礼申し上げます。実に刺激的で、考えることの多い半年間でした。この授業に触れた皆様においても、何かしら次に繋がるものがあれば、これ以上の幸いはございません。